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徒然なるままに、

溜まったオモイのはけぐち。

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そして短い
お久しぶりのSS
 また、この季節がやってきた。別れを惜しみ、新しい出会いに期待を寄せる、そんな季節。見慣れたこの坂道もサンジにとっては別れの一つだ。足癖が悪いにも関わらず三年間履き続け、くたくたになった黒のローファーも、はじめは少し裾が余っていたのに今ではすっかりジャストサイズになった制服も、結びなれたネクタイも、教科書なんて入れたことのない薄っぺらな鞄も。それからもう一つ。

 ―――胸の奥にしまってある、この思いも。

 全て今日で、サヨナラだ。

さくら

 「今年はいつもより早ェんだと。」
 卒業を間近に控えた三年の教室、窓側一番後ろの席。腕組みをしながらグランドを見つめていたゾロが不意にそんなことを言った。
「あのなマリモ。主語と述語って分かるか?ちゃんと日本語喋れってんだ。」
「何が早ェんだ?」
 一つ前の席に座っているルフィが不思議そうな目でゾロの顔を覗き込む。
「さくら」
「さくら?」
 ゾロの隣の机に座っているサンジが予想外の単語に言葉をそのまま返した。どうやら通学途中に今年は桜の開花が早いという話を聞いたらしい。しかしマリモがさくらなんて情緒あるもんに興味を示すなんて珍しい。
「早く見てェな、ついでに酒でも飲めりゃァ最高なんだが」
「未成年が学校で酒なんて言うなっつの!」
 すかさずウソップがあたふたしながらツッコミを入れる。いいな!花見しようなんて騒いでいるルフィやお前も飲めゃあいいだろ。と、意味の分からないことを言っているマリモ。チャイムが鳴り、それぞれが席に着きはじめたところでサンジは頬杖をつきながらゾロの方に視線をやった。
「さくら、そんな早く見てェの?」
 ただの暇つぶしだとでも言うように興味なさそうに聞くと、ゾロは一言だけ、まあな。と答えた。
 凛々しい顔立ちにいつも仏頂面のこの男は表情をほとんど変えなかった。が、俺には分かる。いや、分かってしまう。いくらゾロのことが好きな女の子でも今のはわかんねェだろうな、なんて考える思考回路にサンジは長い前髪の下でふっと笑った。桜なんて咲かなきゃいい。いや、ちょっと違う。桜が咲く季節なんて、来なきゃいい。嬉しそうに話した、隣で寝始めた野郎に、そんなことは言えなかった。

 授業が終わり、生徒が散り散りに帰っていく中で、こいつはまだ授業が終わったことにも気づいていないらしい。スヤスヤと寝息をたて気持ちよさそうに眠っている。規則正しく浮き沈みするその大きな背中はカッターシャツの上からでもほどよく筋肉がついているのが分かる。乱暴に捲られた袖から見える健康そうな浅黒い肌。意外と長い睫毛。なんでかいつも隣にいた同い年の男。なのに、今は無防備な子供みたいで。サンジは愛しいものを見るように目を細めた。ふと、その柔らかな髪に手を埋めたくなった。腕に隠れている口元を暴いて、こいつの息を少しだけ止めたくなった。ぼーっとその横顔を見つめながら、何とも言えない感情に包まれる。この思いはいったいなんなのか、自分でもわからないのに言葉でこいつに伝えられる訳がない。静寂に包まれた二人だけの教室はやけに広く感じた。知らぬ間に自分の心臓が大きく脈打っている。もう、こんな時間は二度とやってこないだろう。なら、今、この一瞬くらい神様も目を閉じてくれる。
 サンジはゆっくりとゾロの机に右腕をついた。左手は一度宙を彷徨い、そのまま椅子の背もたれに置かれた。一度触れたら、もう戻れなくなってしまう。そんな気がした。
「でも、これだけ」
 触れるか触れないか。震える唇で、サンジはゾロの頬にキスをした。これですべてが伝わればいいのにと、バカなことを考えて、背を向けた。
「ほって帰んぞ迷子マリモー」
 いつものように軽口をたたく。キスしたことは、忘れていた。

 初めてこいつを見た三年前の青い空が眩しかった日。あの、坂道の上にある大きな桜の木の下。一目見たときに思ったんだ。あァ、多分俺はこいつのことがって。相手は男だとかそんなことを考える暇もないほど一瞬のできごと。喋ったこともねェのになんでだろう。そんなこと、俺だって分からない。
 その日と同じように、見上げた空は青く澄み、その中にひらひらと桜が吸い込まれていくように見えた。
 「おい、」
 「あァ、悪ィ。ちょっといろいろ思い出してた」
 一目見たその時から訳も分からぬまま動き出したこの気持ち。桜なんて咲かなきゃいいと本気で思った日や、そっと唇で触れた夕暮れ。全部が全部、今となっては思い出だ。そして今日、そのすべてに別れを告げる。
 「言おうと思ってた。」
 そうだ、この満開の桜の木の下で、出会った日から、ずっと言いたかったことがある。
 「初めて会ったそん時から、ずっと、」

――――好きだ

 あぁ、やっと言えた。そう思った時には、この思いとサヨナラしなくて良かったんだと思えた。だって、こいつの顔で桜が見えなかったから。


fin

supercellの「さよならメモリーズ」を聞きながら書きました。
力量不足甚だしく、この世界観を文章にできていないのがつらいところではありますが大好きな曲なので、もし少しでも興味があればぜひ聞いてみてください。

結局この二人はずっと相思相愛だったと思います(さすがゾロとサンジです)
告白のシーンでサンジくんが今までのことを思い出していたわけですがこの二人が同じクラスにいるってそれだけで毎日どれだけハッピーなんでしょうか。たぶんこの幸せ度合は表す日本語ないよね。発狂する「あぁあぁあぁああああまたあの二人けんか(いちゃいちゃ)してるよおぉぉぉぉぉぉぉ」とかがぴったりだと思う(わかりにくい)
ゾロはさくらを見るとサンジを思い出すから、早く咲いてほしかったって言ってました!
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2014.06.19 00:12 | SS | トラックバック(-) | コメント(0) |












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