FC2ブログ

徒然なるままに、

溜まったオモイのはけぐち。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
6月。あつい。最近はバイトでラテアートしてます。簡単そうに見えてあれがまた難しいんですよね。サンジくんなら器用にするんだろうな。…というところから生まれた話ではなく、暗いお話。血とか人の生き死にとか。苦手な方ご注意くださいませ。しかも続きます。ラテアートのお話も書こう!!!(今思い立った)

 どんなことがあっても人を殺してはいけない。人の命を奪うに値する、それが正当化される理由などこの世に存在しない。どんなことがあっても、だ。俺はそう思っている。いや、正確にはそう思えるようになった、と言うべきだろうか。
しかし人間とは愚かなものだ。過ちは繰り返される。それも知らぬ間に、繰り返してしまうのだ。



 ぎらぎらと太陽の熱が照り付ける夏。アスファルトから込み上げるような不快な熱気が足元を包み込む。こんな暑い日に外に出ているものは誰もおらず、住宅街の細い道路には緑の髪の少年だけだ。汗が目に入るのを気にも留めず、前だけを見据えるその目には焦りの色が見え隠れしていた。
「待てってゾロ!俺も行く!」
 後ろから聞こえたのは緑の髪の少年―ゾロと呼ばれたその少年―よりも一回り大きい少年だった。日差しでこんがりと焼けた肌からは外で走り回る活発な少年の日常が見て取れる。そして眼鏡の奥に見えるこの少年の瞳にもまた、焦燥の色が見えていた。しかしゾロよりも大人で、落ち着きがあるようにもみえる。
 ゾロはその切羽詰まった自分を呼び止める声が聞こえていないかのように、もしくは聞こえていないフリをわざとするように、拳を握りしめて振り切るように角を曲がった。

 アスファルトから砂に変わったためか、少し足元がひんやりしたように感じる。両脇にそびえる大木が太陽を遮るようにわずかな木漏れ日だけをもたらす。ゾロの前にはひっそりとたたずむ古い神社があった。ここだけ異空間にあるような、時間も色も空気も、どこをとっても何か今走ってきた風景とは違う感じがする。蝉の煩い鳴き声が合唱のように頭に響く。頭がくらくらする。はあ、はあっ・・・と、ゾロの自分を抑えるような息遣いは蝉には聞こえていないようだ。
 ゆっくりと一歩踏み出すとぼんやりと見えていたモノが、嫌でも頭で理解できる姿になった。かっと目を見開き、瞬きも忘れたその目は一点を凝視していた。誰も小銭なんて投げ入れない腐りかけた賽銭箱の後ろ、左側には綺麗な黒髪の後頭部、右側には見慣れた運動靴。
 心臓が耳の横で動いているのかと思うほどうるさく脈打っていた。体が冷え切っている。足を踏み出すたびに蝉の鳴き声は遠くなり賽銭箱の前に立った時にはもう一匹もいなかった。足が震えている。汗で濡れた掌で思いっきり自分の太ももを何回も殴った。漏れそうな嗚咽を歯を食いしばって耐えながら触れると崩れ落ちそうな賽銭箱に手を置いて後ろにまわる。その時になって初めてツン、と鼻につく嫌な臭いがこのあたりに立ち込めていると気づいた。
「ぅ、ふ、ぅァ…あああああああっ!!!!!!!」
 ただ歯を食いしばるのをやめた途端に腹の底からなにか湧き出てくるかのように声が出た。近づきたいのに、しりもちをついたそこから動くことができなかった。背後で砂利を踏みしめる足音がする。振り向くとそこには長身の黒髪の男が立っていた。逆光で表情まではよく見えないが口元は笑っているように見えて、それが余計に恐怖を際立たせた。
「ありがとう。申し訳ないね。」
 低い声がゾロの耳に届いた。少し見えた顔にはやはりほんのりと笑みが浮かんでいて、迷子になり泣き叫んでいた幼い子がやっと母親を見つけ安堵したような、そんな顔だった。
 死ぬ間際でさえも、そんな顔だった。

 気づけば自分は血だらけになっていて、隣には幼馴染が同じように血だらけで立っていた。
「大丈夫だからな。」
 そういった幼馴染の左手にはナイフが握られていた。顔に目を向けると血の涙を流していた。後から頬についた血が涙で流れているだけだったと理解したが 。
 目の前には黒髪の男が横たわっていた。何か所も刺されたようだ、辺りは血だまりになっている。目はうつろに開かれたままになっていて、その瞳はグレーの中にほんのり藍色が重なっているような、にごった色だった。暑さと、蝉のはやしたてるようなうるさい悲鳴にも似た鳴き声にぼーっとする頭がだんだんとクリアになっていく。知らない男の横で、くいなが無残な姿で死んでいた。その事実だけでもう十分だった。この血だまりは、すでに絶命したこの男と、くいなの血と半分ずつだ。

 二人の少年の前には見るも無残な二つの死体。やってきた警察は一瞬たじろいだように顔を見合わせ、少年たちを保護した。
「ゾロが殺されそうになってたから、俺が殺した。」
 幼馴染はそう言ってナイフを警察に渡した。ゾロはそのやりとりを眺めながら、まだどこか夢を見ているような感覚に陥っていた。夏休みは気が緩んで事故や事件に合いやすくなるから気を付けましょうなんて社交辞令みたいなもんだと思っていたのに。
「ゾロ、いくぞ。」
「…あァ」
 警察の護送車に乗り込む。二人の少年は一言も話さなかった。
 幼馴染は無罪、正当防衛とみなされた。それ以上に連続少女殺害事件の犯人をやっと突き止めた少年としてマスコミはこぞって一種の英雄的扱いをした。




 時間とは時に残酷なもので、くいなが死んだ事実は永遠に変わらないが、あの夏の出来事は徐々に過去のこととして考えられるようになった。その割には過去に囚われたように警察官を目指し、今や公安警察に所属している。少しでもあんな残酷な事件が減るように、自分のような、いや震えながらナイフを持っていた幼馴染のような悲惨な連鎖を食い止めることができるように、と。

「ほんっとザルだな。もっと味わって飲みやがれ。」
「今日は酔いてェ。金ならある。」
 空になったグラスを傾け、カランと冷たい音が響いた。夜でさえ蒸し暑くこの氷もすぐに溶けてしまうだろうと、ゾロはカウンター越しにいるマスターの顔は一切見ずにグラスを見つめていた。
「なァ、ぞろ?」
 マスターはそんな悲しい顔するなと甘く宥めるような声色で呼ぶと度数の高い酒を口に含んだ。ゾロはこの先の展開が読めたのか手に持っていたグラスを置くと身を乗り出し両手でマスターの後頭部を包み込んだ。金色の髪がうねる。ゾロの唇から唾液か酒か分からない液体が滴る。足りないとでもいうようにマスターの口内を、腹を空かせた獣のように下で弄る。
「…これっぽちじゃ酔えねェな。」
「盛ってんじゃねえよ。」
 ゾロが黙っているとマスターは分かってるとでもいうように優しいキスを落とした。
スポンサーサイト
2015.06.04 11:49 | SS | トラックバック(-) | コメント(0) |












管理者にだけ表示

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。